企画でつまずくとDXは失敗する -DX企画人材の育成-
「2025年の崖」を目前にDXに取り組んでいる企業は着実に増えており、成果が出ている企業の割合も増加傾向にあります。一方で、DXプロジェクトには数多くの課題がつきまとい、思うような成果が出せていない企業も多数あります。そのような企業の中には、デジタル技術を利用すること自体が目的になってしまい、「生成AIを導入したが成果が出ない」「利用部門に使ってもらえない」などの失敗に陥ったケースも少なくありません。
DXはデジタル技術を活用して業務やビジネスを変革することが目的です。単なるデジタル技術の導入はDXの企画ではありません。ビジネスや業務を起点にデジタル技術の活用による改善改革の方向性を検討することが、DXの企画であり、成功の鍵です。
そこで本ページでは、DXの企画と推進ができる人材の育成についてご紹介します。
DXプロジェクトの実態
DXに取り組む約35%の企業が、成果を出せていない
日本におけるDXに取り組んでいる企業の割合※1は、2021年度の55.8%から73.7%に増加しているにもかかわらず、約35%の企業は成果が出せていません。
DXの成果状況
独立行政法人 情報処理推進機構 「DX動向2024」 P6 図表1-8をもとに作成
※1 出典:独立行政法人 情報処理推進機構 「DX動向2024」 P2 図表1-1
DXの成果が出せてない要因
計画(企画)フェーズの考慮不足
日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2023」によると、「計画時の考慮不足」「現行業務・システムの複雑さ」「仕様変更の多発」が、DXプロジェクトが予定通りにならなかった3大要因であるという調査結果があります。特に計画(企画)フェーズの考慮が不足していると、後工程で業務やシステムの複雑性が判明し、仕様変更につながり、予算超過と納期遅延を招くことが推察できます。※2
また、計画(企画)時にデジタル技術を活用する目的や達成目標の検討、解決すべき課題の洗い出しが不十分だと、「利用部門に使ってもらえない」「PoCより先に進まない」など成果に結びつかない結果となります。
システム開発プロジェクトが予定どおりにならなかった要因
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2023」 P175 図表7-1-3をもとに作成
※2 参考:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2023」 P174
DXを企画する人材の不足
自社のビジネスや業務に精通している人材が企画フェーズから参画することが、DX推進において重要であることは皆さんもご存じかと思います。しかし、多くの企業でデジタル技術を活用したアイデアの発想や企画の役割を担う人材が不足しています。
最も不足している人材(人材累計別)
独立行政法人 情報処理推進機構 「DX動向2024」 P33 図表3-4をもとに作成
経営層・利用部門の巻き込み不足
計画(企画)段階から経営層やシステムの利用部門を巻き込まずにプロジェクトを進めると、利用部門に使ってもらえないシステムが出来上がり無駄な投資につながります。
また、計画(企画)段階からの巻き込み不足は、部門間の連携不足や情報共有の不足を生み出し、DXプロジェクトの進行を阻害することにもつながります。
DXにおけるIT企画の進め方
DXは「企業が生成AI、AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用して、業務プロセスの改善や、新たなビジネスモデルの創出、レガシーシステムからの脱却や企業変革を実現すること」であり、単なるデジタル技術の導入が目的ではありません。
DX企画には、ビジョン・戦略・ロードマップの策定や、新規事業の開発、デジタル・IT企画、システム化構想などが含まれます。そして、企画フェーズがDXプロジェクトの成否を分かつ分水嶺であることは前述のとおりです。そして、デジタル・IT企画、システム化構想フェーズでは、まずDXの目的や達成目標を明確にしてから、目的達成のための解決すべき課題を洗い出し、次に解決すべき度合いの高い課題に対して具体的な改善改革の方向性を見出していくことが重要です。具体的には次のように進めていきます。
DXにおけるIT企画手順 ※3
- STEP1:背景の確認・共有化
- STEP2:現状の調査・分析
- STEP3:現状の診断
- STEP4:新システム課題の統合化
- STEP5:ジョブ・アーキテクチャ
- STEP6:システム・アーキテクチャ
- STEP7:開発マスタプランの策定
- STEP8:新システム構想の報告と承認
※3リンクレアが独自に持つIT企画フレーム「CANVAS-SA🄬」
DXにおけるIT企画人材の育成
企画経験の浅い人材や利用部門主導でDXを推進する人材が、IT企画を実践できるようになるためには、基礎となる知識や押さえるべきポイントを学習すること(=インプット)も重要ですが、実プロジェクトの中で自らやってみること(=アウトプット)が最も効果的です。
そのためには、IT企画の実戦経験を積むための体制づくりが重要となります。
また、実プロジェクトで実践経験を積む機会が少ない場合は、講義だけではなく実践やワークショップを伴う研修を通じて学習していくことも効果的です。
㈱リンプレス※4では、仮想テーマをもとにIT企画の一連の流れが学べる実践・体験型のIT企画研修をご提供しています。研修では、前述のDXにおけるIT企画 手順(CANVAS-SA🄬)に沿って、ワークショップ形式で業務課題の洗い出しや改善改革の方向性を導き出していきます。
※4 ㈱リンプレスDX人材の育成事業を手掛けるリンクレア100%子会社
IT企画の手順・考え方を学ぶ研修
人材育成につまずかないためのポイント
DXを推進する多くの企業が人材確保に苦戦しており、大半の企業が社内人材の育成や既存人材の活用によって人材を確保しようとしています。しかし、人材育成につまずいている企業も少なからずあり、「育成戦略や方針が不明確」であることが最も人材育成を阻害する要因であるといった調査報告※5があります。反対に人材育成が成果につながっている多くの企業は、明確な「育成戦略や方針」にもとづく研修や、「上司によるキャリア面談」を実施しています。※6
これらのことから、以下3点を留意し人材を育成することが肝要であると考えます。
- 育成戦略や方針の策定
- 上司による定期的なキャリア面談やフォローの実施
- IT企画の進め方を体系的に理解し、実践の機会を増やしていくこと
※5 参考:独立行政法人 情報処理推進機構 「DX動向2024」 P39 図表 3-13
※6 参考:独立行政法人 情報処理推進機構 「DX動向2024」 P40 図表 3-14
まとめ
DXプロジェクトの成否は、計画(企画)フェーズで決まると言っても過言ではありません。また、計画(企画)フェーズでの考慮不足の影響は、プロジェクトの後工程や導入後に発覚することが多いことから、計画(企画)に携わる人材の育成がDX成功のはじめの一歩と言っても良いのではないでしょうか。
本ページでご紹介したDXを企画する手順(IT企画フレーム「CANVAS-SA🄬」)とIT企画実践研修の概要が分かる資料を別途ダウンロード頂き、DX推進にお役立てください。
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