DX推進に欠かせないビジネスアーキテクト 必要なスキルと育成方法5選

デジタルトランスフォーメーション(DX)が推進される中で、IT部門にはシステム運用や保守主体の「守り」の役割に加え、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革や戦略的なビジネスを推進する「攻め」の役割も求められるようになりました。こうした変革を実現するうえで、ビジネスアーキテクトは多くの企業の注目を集めています。
この記事では、ビジネスアーキテクトの役割や必要なスキル、そしてそのスキルを習得する方法について分かりやすく解説します。
資料:人材育成サービス
ビジネスアーキテクトの役割
経済産業省とIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は、ビジネスアーキテクトをDX推進の中核人材と位置付けています。そして、ビジネスアーキテクトが担う役割は、「新規事業開発」「既存事業の高度化」「社内業務の高度化・効率化」と定義しています。
新規事業開発
新しい事業、製品・サービスの目的を見出し、新しく定義した目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する
既存事業の高度化
既存の事業、製品・サービスの目的を見直し、再定義した目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する
社内業務の高度化・効率化
社内業務の課題解決の目的を定義し、その目的の実現方法を策定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する
ビジネスアーキテクトの代表的なアクション
上記3つの役割を担うビジネスアーキテクトの代表的なアクションは以下の通りです。
IT戦略の策定
- 経営戦略やビジョン、ミッションを実現するための実行可能なIT戦略と計画の策定
業務課題の発見
- 業務プロセスの分析
- 業務課題の特定やニーズの洗い出し
- 課題解決に資する施策の検討
デジタル技術の導入
- 事業部門の要求や課題を解決するために必要なデジタル技術導入の検討
- 新しいシステムやデジタル技術の選定、仮説検証、導入後の効果検証
- 新しいシステムやデジタル技術を活用したビジネスモデル、ビジネスプロセスの設計
関係者との協働関係の構築
- 事業部門やIT部門などのプロジェクト関係者との良好な協働関係の構築と維持
ビジネスアーキテクトの役割を外部委託することは可能か?
ビジネスアーキテクトの役割を委託することは可能です。しかし、企業が独自に持つ文化(価値観)や業務の特性・課題に対してビジネスアーキテクトの理解が不足していると、自社にマッチしないIT戦略や計画を立案するリスクがあります。
外部委託のメリット
高度な専門知識の活用
最新のデジタル技術や特定の分野に特化した専門知識やノウハウを活用できます。 また、プロジェクト経験が豊富なビジネスアーキテクトであれば、プロジェクト推進のノウハウや事例に関する知識も豊富であるため、円滑なプロジェクト推進が期待できます。
コミュニケーション摩擦の軽減
外部からプロジェクトに参画するビジネスアーキテクトは、社内では気づかない課題や改善点に気づき、利害関係にとらわれない率直なアドバイスや提案を行うことができます。さらに、客観的な視点からのアドバイスや提案は、比較的受け入れられやすい傾向があります。
外部委託のデメリット
企業文化(価値観)、業務特性の理解不足
自社の文化(価値観)や業務の特性、課題の理解不足から認識齟齬が生じたり、自社にマッチしないIT戦略や計画を立案する恐れがあります。さらに、理解不足の解消や認識齟齬を正すためにはコミュニケーションコストが必要となります。
情報漏えいのリスク
自社のノウハウや機密情報、知的財産が外部に漏洩するリスクを伴います。
依存のリスク
過度に依存してしまうと、自社にノウハウや専門性が蓄積されず、独自性や競争力の低下を招く恐れがあります。さらに、判断力や問題解決能力が低下する可能性もあります。
ビジネスアーキテクトの外部委託のメリットとデメリットを理解したうえで、外部委託と同時に社内の人材を育成することが最良のアプローチと言えるでしょう。
ビジネスアーキテクトに必要なスキル
ビジネスモデルや業務プロセスを設計するスキルやデジタル技術に関する専門的な知識に加えて、高いコミュニケーションスキルやプロジェクト推進力などのスキルが、ビジネスアーキテクトには求められます。
ビジネス変革力
自社を取り巻く外部環境や内部環境、マーケットのニーズ、最新技術動向などを踏まえたビジネス戦略の立案と、新ビジネスを開発し推進するスキルが求められます。
業務分析力とIT企画力
業務部門のニーズや課題を特定し、デジタル技術を活用した解決策の立案とビジネスプロセスを見直すスキルが求められます。そのためには、業務の全体像を把握し、経営目標に沿った解決策や計画の提案ができる分析力と論理的思考力の習得が必要です。

コミュニケーション能力
ビジネスアーキテクトは、経営層、業務部門、IT部門などのステークホルダーと良好な関係を構築・維持しなければなりません。そのためには、プロジェクトが円滑に進むよう、時折生じる部門間の意見の対立を解消し、効果的なコミュニケーションができる能力が求められます。
プロジェクト推進力
ビジネスアーキテクトは、プロジェクトを計画通りに終わらせる責任を負います。そのため、予期せぬトラブルや課題が生じた場合、リーダーシップを発揮しつつ、メンバーとの適切なコミュニケーションを取り、プロジェクトを正常な状態に保ちながら円滑にプロジェクトを推進する能力が求められます。

プロジェクトマネジメント力
プロジェクト管理技法やツールを駆使し、プロジェクト活動において「実施すべきタイミング」や「実施すべきこと」を正しく理解し、プロジェクト全体を管理する能力が求められます。
デジタル技術に関する専門的な知識
クラウド、生成AI、データ活用などに関するデジタル技術のトレンドの理解と、デジタル技術を導入するための技術的な知識が必要です。
ビジネスアーキテクトを育成する方法
社内トレーニングプログラムの実施
社内トレーニングプログラムの実施は効果的です。ただし、効果的な社内トレーニングプログラムを実施するためには、ビジネスアーキテクトのリソース確保と研修ノウハウを持った人材が必要となります。
メンター制度の導入
経験豊富なビジネスアーキテクトがメンバーを指導するメンター制度を導入することで、実践的なスキルを学ぶことができます。一方で、メンバーの指導には、先輩ビジネスアーキテクトのリソース確保が必要不可欠です。
プロジェクトへの参加(OJT)
未経験者を実際のプロジェクトに参加させることで、実践的なスキルの習得が期待できます。メンター制度と併せて実施すると、一層の効果が期待できます。実際のプロジェクトへの参加は実践的な学びを得られる場である一方、体系的な学びにつながりにくい可能性があります。
資格取得
TOGAF🄬やPMP🄬などの資格取得は、ビジネスアーキテクトに必要なスキルを体系的に学習することができます。
TOGAF🄬(The Open Group Architecture Framework)
ビジネスアーキテクチャの他にITアーキテクチャに関する知識を身につけることができ、ビジネスとITとの橋渡しに役立つ資格
PMP🄬(Project Management Professional)
プロジェクトの管理・推進に役立つ資格
外部研修の利用
外部研修を利用することで、専門性の高い知識や最新技術に関して体系的に学ぶことができます。社内フォローや実務経験と組み合わせることで、高い学習効果が期待できます。
外部研修を利用するメリット
① 高度な専門知識と最新トレンドを学べる
顧客向けにDXプロジェクトに携わっている会社が提供している研修サービスは、経験豊富なビジネスアーキテクトが講師を務めることがあります。そのため、事例や実践的なアプローチ手法、最新のツールに関する知識の習得が期待できます
② 効率的な育成が期待できる
自社の人的リソースや時間を割かなければならない社内トレーニングとは違い、外部研修はカリキュラムや教材があらかじめ用意されており、人材育成のノウハウも豊富であるため、効率的に育成することができます。
③ 客観的な視点が養え、視野を拡げることができる
社内トレーニングプログラムやOJTは、自社の文化や慣習にとらわれ、視野が狭くなる恐れがあります。外部研修では講師や他社との交流を通じて、客観的な視点が養われ、視野を拡げることができます。
まとめ
ビジネス戦略とIT戦略を結びつけ、業務プロセスの変革を実現するビジネスアーキテクトは、DX推進の要となる人材です。そして、ビジネスアーキテクトが担う役割の重要性を理解し、育成していくことが、DXを成功に導く鍵となります。
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