AI人材育成のはじめかた AI人材に求められる能力とは?
社内でAI人材を育成するにはどうすれば良い?資格取得を推奨する?
お客様から「AIの資格取得を目的としたセミナー」の依頼を受けた際、弊社が実際にご提案した内容を元に「AI人材育成の始め方」の一例をご紹介します。自社のAI人材育成について、考えて頂くきっかけになれば幸いです。
AI導入の実態・AI人材の不足
皆さんはAIの導入について、どのような意識をお持ちでしょうか。製造業など、導入事例が比較的多い業界では「既に導入している」という方や「他社に遅れをとっているので、早く検討を進めたい」という方もいらっしゃるかもしれません。一方で「関心はあるが、特に導入の予定はない」「事例が少なく、導入イメージが湧かない」という方もいらっしゃることでしょう。
AIの導入率については、様々な調査報告が出ていますが、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発行する「DX白書2021」によると、日本国内のAI導入率は約20%とされています。まだまだ少ないと思われがちですが、実は「2020年度と2021年度を比べると、 約5倍に増加」していることをご存じでしょうか。「実証実験(PoC)を行っている」「利用に向けて検討を進めている」「これから検討をする予定である」も加えると、半数近くが導入に前向きな回答を示していることがわかります。
出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2021:図表42-48」「DX白書2023:図表:5-71」
しかし、国内では「AI人材の不足」が深刻化しており、経済産業省 「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で14.5万人のAI人材が不足するとも言われています。 引く手あまたのAI人材は採用が困難ですし、外部ベンダーの協力を得るにしても、自社のことをよく知る「社内のAI人材」は必須です。「社内でAI人材を育成するにはどうすれば…」と頭を抱える方も多いのではないでしょうか。そうしたなか、弊社では、あるお客様から次のような依頼を頂きました。
- AIに関する取組みが遅れており、業界内でも遅れをとっている
- 会社の方針として、AI導入とAI事業の推進が決まった
- AI人材を育成するため、資格取得を目的としたセミナーを開催してほしい
一見、よくあるお悩みですが、弊社はこの依頼に対して、資格取得を目的としたセミナーではなく「AIの実運用や実践を意識したセミナー」をご提案しました。本記事では、この事例についてご紹介します。
資格取得は、本質的な課題解決策か?
AIの導入には「①AIの基礎知識を持つ」「②AIを構築する」「③AI導入を企画・推進する」の3要素が必須です。そのためのベンチマークとして、資格取得を推奨している企業も多いことでしょう。実際、弊社内でも、AI資格取得の奨励を行っています。 しかし「資格取得によってAI導入が担保されるか」かと言うと、実務経験なくしては非常に難しい問題でしょう。資格取得後、大量の自社データを目の前にして「どう使ったらよいのか、どう分析すれば良いのかに悩み、手が止まってしまった」ということはよくある話です。
資格取得は、一定の知識量を証明する重要な指標ですが、「実践力」を伴わなければ、その知識を十分に活かしきることはできません。本や動画をメインに学ぶ際も、同様に注意が必要でしょう。「実践」や「実践を意識した学び」の機会を確保することは、導入成功の鍵を握る重要なポイントです。また、個人学習は「各々の知識量や認識のバラつき」を生みやすく、その状況自体にも気がつきにくいため、この点も注意が必要です。
よって、AI人材育成の初期段階においては、次のような視点が必要です。
AI人材育成(初期段階)のポイント
- 資格取得だけでは学べない「プロジェクトの実例や実態」を学び、AIに対する社員の意識や学習意欲を向上させ、実務での利用イメージを高めること
- AIの基礎知識や、プロジェクトの仕組み・流れを社内の共通認識として学び、皆でAIについて考えることができる環境作りを整えること
上記の観点から、弊社では「資格取得対策を目的としたセミナー」ではなく、AIプロジェクト事例や実態をお伝えする「実践を意識したセミナー」の開催をご提案し、無事開催させて頂くに至りました。 上記のご提案にあたっては、近年の「AI人材」に求められる能力の変化も大きく影響しています。次章ではその内容についてお伝えします。
今、求められている「AI人材」とは
ノンプログラミングでAIを構築できるツールの台頭など、専門知識を持たずとも簡単にAIを構築し、利用できるようになった今、「求められるAI人材像」は大きく変容を遂げています。
従来のAI人材は、いわゆる「データエンジニア、AI技術者、データアナリスト」を指すことが多く、「プログラミングを行い、AIを構築できること」や「分析業務ができること」に重点が置かれ、それらが必須要素とも言える状況にありました。 しかしAI開発ツール(とりわけGUIツール)の普及により、AIはプログラミングが不要となり、エンジニア不在でも扱えるようになったことで、開発コストも以前に比べて大幅に下がっています。
AIの構築・分析業務に対するハードルが確実に下がっていくなかで、AI人材には「AIを構築する・分析する能力」よりも、「AIを現場で活用できる能力」が求められるようになってきました。これは、AIの基礎知識を元に「AI導入を企画・実行・推進する力」とも言えるでしょう。
AI人材に求められる能力
- AIのメリット・デメリットを認識し、ビジネスの目的に沿った活用法を考えられるか
- AIプロジェクトを企画・設計し、具体的に推進していくことができるか
- 現場部門とAIエンジニアとの間に立ち、双方のビジネス言語の通訳をしながら、コミュニケーションを進めていけるか
こうした要素は資格取得ではなかなか得られるものではありません。「現場に活かせる知識」や「プロジェクト事例の知見」「実践による学び」から補い、養っていく必要があります。
信頼できるパートナー企業を持つ
「現場に活かせる知識」や「プロジェクト事例の知見」「実践による学び」を得るには、AIについての専門知識やプロジェクト経験を持つパートナー企業の存在が必須です。リンクレアでは、AI・機械学習の分野において、青山学院大学の小野田研究室と産学連携を行い、プロジェクトを推進しています。また、弊社からは「機械学習を用いたプロジェクトの実態」をテーマに、大学院生向けの講義を実施しています。
50年のシステム開発実績と、30年に渡るプロジェクトリーダー研修開催実績を元に、リンクレアが近年取り組んできた「AIプロジェクトの実態」「イメージとのギャップ」「現場から学んだ、生きた知識」「プロジェクト推進に必要な“ものの見方・考え方”」など、現場に活きる「AIプロジェクトの情報」をお伝えすることで、お客様のAI導入や、AI人材育成をサポートしております。※詳細内容をご希望の場合は、ページ下段のお問い合わせフォームより、お気軽にお問合せ下さい。
まとめ
AI導入が進むなか、企業にとって「社内のAI人材教育」は重要課題の一つです。資格取得は一定の能力を示すものとして有効な手段ですが、同時に「実務に活かせる力」を養わなければ、実際の導入は困難です。 AI人材に求められる能力が「AIを構築する能力・分析する能力」から、「AIを現場で活用できる能力」へと大きく変容を遂げるなか、より実践に近い学びを取り入れることは必須条件です。さらに、部署の壁を越えてAIの基礎知識を学ぶことができれば、社員間で共通言語や共通認識を持った状態で意見交換ができるようになり、将来的にプロジェクトの円滑な推進を期待することもできるでしょう。
社内のAI人材育成は、資格取得推奨や個人学習に委ねるのではなく、将来の導入や全体像を見据え、信頼できるパートナー企業様と共に検討されることをお勧めします。「資格取得の一歩その先」を見据えたAI人材育成プランを、推進して頂きたいと思います。
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