システム開発の外部委託 メリット・デメリットと依頼時の3つのポイント
システム開発の外部委託を検討中のご担当者必見。本ページでは、システム開発を外部委託するメリットとデメリット、委託時に注意すべきポイントを分かりやすく解説しています。 さらに、「外部委託するときは、ベンダーにどのようなことを伝えれば良い?」「期待する提案がもらえるのか」など不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。そのような方のために「提案依頼書(RFP※1)」の無料テンプレートをご用意していますので、是非ご活用ください。
※1 RFP:Request for Proposal
外部委託のメリット・デメリット
システム開発を外部へ委託する代表的なメリットは、ベンダーの高度な技術力を活かしたシステム開発が期待できる点です。しかし、ノウハウ・知見が社内に蓄積されないといったデメリットもあります。 外部委託する際には、メリット・デメリットを理解したうえで、案件ごとに適した方法でシステム導入を進めていく必要があります。
メリット
- 社内にシステム担当者を確保しておく必要がなく、IT人材(人件費)の最適化ができる
- 開発に必要な設備投資が不要
- システム構築ノウハウと技術力があり、高度な技術を要するシステムの開発もできる
- 案件ごとのコスト管理がしやすい
- システムの設計・プログラミングを外部ベンダーに依頼することで、コアな業務に専念できる
デメリット
- 商習慣や自社の業務理解に時間がかかる
- 社内の機密情報やノウハウの漏えいリスクがある
- 明確なニーズ(解決すべき課題・実現したいこと)の事前調査と共有が必要
- リリース後の機能追加や改修の都度、費用が発生する
- 社内にノウハウ・知見が蓄積されない
外部委託の際に気を付けるべきポイント
課題解決のためにシステム導入を検討されているご担当者の中には、世の中に出回っているシステムやサービスの多さに戸惑う方も多いかと思います。そこで、本章では「システム開発」と「契約形態」の種類ごとの特徴と、精度の高い見積りや期待通りの提案を受けるためのベンダーへの伝え方について解説します。
システム開発の種類
一言でシステム開発と言っても、既に完成した汎用的なシステムの利用や、独自性・柔軟性に富んだスクラッチ(プログラミング)開発など様々な手段があります。 自社業務の特性や開発・運用担当者の技術レベルに適した手段を選択する必要があります。
スクラッチ(プログラミング)開発
スクラッチ開発とは、ゼロからシステムを設計・プログラミング開発する手法です。高度な技術知識を要しますが、細やかなニーズに合わせて柔軟にシステムを開発することができます。
ノーコード開発
ノーコード開発とは、システム開発に必要な部品やテンプレートが用意されているプラットフォームを活用する開発手法です。 ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で部品やテンプレートを組みあわせて開発するため、技術知識のない担当者でも短期間でシステムを開発することができます。 ただし、開発可能なシステムはプラットフォームが提供するサービスの範囲に限られます。
ローコード開発
ローコード開発とは、スクラッチ開発とノーコード開発の特徴を兼ね合わせた開発手法です。 ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作によるノーコード開発機能と、柔軟にプログラミングができる機能を有しているプラットフォームを活用します。 ある程度の技術知識を必要としますが、最小限のプログラミングで開発ができるため、システムを柔軟、かつ高速開発することが可能です。
クラウドサービス(SaaS)の利用
クラウドサービスとは、インターネット経由でシステムやサーバー環境を提供するサービスです。 従来のように自社でサーバー環境とシステムを構築・維持する必要がなく、サービスを提供する会社と契約するだけで利用可能なうえ、サーバー環境とシステムの維持が不要です。
【SaaSの一例】
- Gmail:Google社が提供するメールサービス
- Slack:Slack Technology社が提供するビジネスチャットツール
- Zoom:Zoom Video Communications社が提供するオンラインミーティングツール
- Salesforce:Salesforce.com社が提供するCRM(顧客管理)とSFA(営業支援)のアプリケーション
- その他:様々な企業がクラウド上で提供する経費精算システム、勤怠管理システム・・・など
業務パッケージの導入
業務パッケージの導入とは、業務に必要な機能を汎用的に開発したシステムを利用することです。似たものにERP※2パッケージ(統合基幹業務システム)の導入があります。 業務パッケージは販売管理業務などの単一業務機能の提供に限られていますが、ERPパッケージは企業活動で必要な資源 (ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理し、経営の効率化を図るシステムです。一般的には、財務/会計、人事/給与、予算管理、販売管理、生産管理、在庫管理などの 基幹業務システムが一つにパッケージングされたシステムです。どちらも個社要件に合わせたカスタマイズ可能な製品もありますが、初期費用とバージョンアップの費用が増大する傾向にあり、注意が必要です。 また、自社保有のサーバーにインストールするオンプレミス型とクラウド型があります。
※2 ERP: Enterprise Resources Planning
【業務パッケージの一例】
- 財務/会計システム
- 人事システム
- 給与システム
- 販売管理システム
- 生産管理システム
- 在庫管理システム・・・など
【代表的なERPパッケージ】※3
- SAP ERP:SAPジャパン社
- Oracle Fusion Cloud ERP:日本オラクル社
- OBIC7:オービック社
- SMILE V 2nd Edition/SMILE V Air:大塚商会社
- GRANDIT:GRANDIT社
- 奉行V ERP:オービックビジネスコンサルタント社・・・など
※3 2023年6月時点
契約形態の種類
システム開発に限らず外部へ委託する際は、発注者・受注者間で契約書を必ず取り交わします。委託する内容、目的やプロジェクトの特性に応じて、適切な契約形態を選択する必要があります。 本章では、システム開発では、「請負契約」「準委任契約」「派遣契約」3つの契約形態があり、それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
請負契約 | 準委任契約 | 派遣契約 | |
---|---|---|---|
目的 | 納品物 | 業務の遂行 | 業務の遂行 |
従事者の雇用元 | ベンダー | ベンダー | ベンダー |
指揮命令系統 | ベンダー | ベンダー | 委託会社 |
対価(報酬) | 納品物 | 業務の遂行 | 業務の遂行 |
責任の所在 | ベンダー | 委託会社 | 委託会社 |
契約不適合責任 | あり | ー | ー |
請負契約
請負契約(一括請負契約)とは、発注者がベンダーに対して、仕事の完成を約束させる契約形態です。 発注者は開発を依頼するシステムの要件、仕様、品質、希望納期をベンダーへ事前に提示し、ベンダーは提供された情報をもとに開発期間(納期)、工数、金額を見積り発注者に提示します。 提示された内容に対して両者の合意形成の証として契約書を締結することで、ベンダーは契約書に定めた納品物を期日までに完成・納品する義務を負います。 言いかえれば、契約書に定めたとおりに納品されたとき、ベンダーへ対価(報酬)を支払う契約となります。
【メリット】
- 要件どおりのシステムが納品される
- システム開発コストが明確になる
【代表的なERPパッケージ】
- 社内にノウハウ・知見が蓄積されない
- 発注後の仕様変更・追加が困難
準委任契約
準委任契約とは、発注者が依頼した仕事(法律関連以外の仕事)をベンダーが遂行する契約です。また、準委任契約には、「履行割合型」「成果完成型」の2種類があります。 履行割合型は、委託した業務遂行に要した工数※4や作業時間に対して、対価(報酬)を支払います。納品物が具体的に想定できないシステム企画や要件定義などの業務委託に適した契約形態です。 一方、成果完成型は、受託した業務を遂行したことで発注者が得られる成果に対して、対価(報酬)を支払います。請負契約とは違い、受託者は完成責任の義務を負いません。
※4 工数:業務遂行に必要な人員数と作業時間で表す作業量のこと。(人員数×一人当たりの作業時間)
依頼内容の伝え方
システム開発を外部に依頼する際、最も注意を払わなくてはならないポイントは、ベンダーへ依頼する内容を明確に伝えることです。 準委任契約や派遣契約の場合は、「いつから」「どのようなシステムを作りたいか」「背景・目的」「期待する役割」「必要とするスキル」「人数(体制)」「予算」などをベンダーに伝えることで、 提案を受けることができます。しかし、請負契約を前提に依頼する場合は、「システム化の背景・目的」「解決したい課題」「実現したい事」 「どのようなシステムを作りたいか」などを纏めた提案依頼書(RFP)を作成することをお勧めします。
RFPは詳細に記載するほど伝え漏れや認識齟齬が少なくなり、正確な見積りを受け取ることができます。しかし、上図のような本格的なRFPを作成いただけるとベンダーとしては非常に助かりますが、 それなりの時間と労力を必要とします。弊社がシステム開発の提案依頼を受ける際に、ご提供いただけると助かる項目は以下です。 「提案依頼書(RFP)無料テンプレート」をダウンロードいただき、RFP作成時に必要なページを抜粋してご活用ください。
ご提供いただけると助かるRFPの項目
【システム化の概要】
- システム化の背景
- 解決すべき課題
- 新業務概念図
- 関係する組織
- システム利用者
【提案依頼事項要】
- 提案の範囲
- 要件の詳細
- 納期、工程およびスケジュール
- 貴社情報
【提案手続きおよび開発の条件】
- 提案手続き・スケジュール
- 本件に関する問合せ窓口
まとめ
「システム開発」と「契約形態」の種類ごとの違いについて、ご理解いただけましたでしょうか。システム導入で課題を解決し効果を上げるためには、 実現手段ばかりに目を向けてはいけないことにお気づきの方もいるかと思います。お気づきのとおりシステム導入成功のポイントは、上流工程(要求定義・要件定義)です。外部委託に言いかえると、 ベンダーに対して「システム化の背景・目的」「解決したい課題」「実現したい事」「どのようなシステムを作りたいか」を明確に伝えることです。これからシステム導入についてベンダーと相談をお考えの方は、 「提案依頼書(RFP)無料テンプレート」をご活用ください。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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